Magic Nipple とは?
Magic Nipple(魔法のニップル)とは、0.2% BeCu の優れた熱特性により、アウトガスを抑制し極高真空環境を容易に造る、他にはない卓越した製品です。
詳しい解説は下記の記事もご覧ください。
ステンレス製ゲージポートの欠点
ステンレス(チタンも同様)は、熱線(赤外線~可視光)の吸収率が非常に大きく、一回の反射で約36%の熱線が表面で吸収されます。ゲージのグリッドやフィラメントは、細い針金でできていますので、この線材に当たる確率よりも、ステンレスの壁に当たる確率の方が圧倒的に高く、7~8回も反射を繰り返せば、熱線は吸収されて無くなってしまいます。
結果、フィラメントからはどんどん輻射熱が放射され冷え続け、フィラメントを加熱するために、大きな電力が必要になるのです。
また、ステンレスやチタンは、多々ある金属の中でも、最も熱が伝わりにくい金属です。そのため、一旦熱が吸収されると、熱が逃げにくく、真空端子やフランジなどの温度が上昇し、結果、ガス放出が大きくなってしまうのです。
Magic Nipple の原理について
SUSのニップルの場合
1. 熱輻射率が大きい
熱輻射率0.36と大きいのでフィラメントから放射される赤外線 (グリッドからの軟X線吸収も大きい)がステンレスの壁に吸収されやすく、フィラメントに戻らないため、フィラメントから電子を放出できる温度まで、加熱する電力を大きくする必要がある。
2. 熱伝導が悪い
沢山の熱を吸収した上、熱伝導が悪いので吸収した熱が真空壁に滞留する。
3. 壁の温度が上昇する
真空壁の温度が上昇し、ガス放出が大きくなる。
0.2% BeCu 合金のニップルの場合
1. 輻射率が小さい
輻射率が小さいのでフィラメントから放射される赤外線が壁に吸収されにくい。壁で反射された赤外線はフィラメントにもどり、電子を放出できる温度まで加熱する電力が小さい。
2. 熱伝導が良い
熱伝導が良いので吸収された熱は速やかに壁内に拡散し、 壁の温度が低くなる。吸収される赤外線の量も少ない。
3. 壁の温度が上昇しない
壁の温度が上昇しないのでガス放出が小さい。 さらに0.2%BeCu合金材料自体のガス放出が極めて小さい。
まとめ:Magic Nipple を使用するとどう変わる?
東京電子の0.2% BeCu 合金材料で製作したMagic Nipple でゲージ周囲を囲むと、フィラメントから放射された熱線は、壁の表面で97%の割合で反射されるようになります。壁を鏡面に磨けば、より効果的です。熱線は100回以上反射を繰り返し、フィラメントに再入射する熱線量も増えます。
実際にゲージの真空端子に電流計と電圧計を付けて、ステンレスとMagic Nipple で比較してみると、Magic Nipple の方が、消費電力が1/3まで小さくなることが分かりました。一方、真空端子やフランジなどに伝わった熱は、銅の高い熱伝導性により、Magic Nipple 側に速やかに拡散するため、真空端子やフランジからのガス放出を大きく抑えることができるのです。